こんにちは、るなまるです。
普段はビッグデータの分析を行っているエンジニアです。
いわゆる「データサイエンティスト」という業種ですね。
職業柄データを分析することが得意なため、FXについても様々な角度から検証しています。
過去にテクニカル分析を中心としたEAをいくつか自作してきましたが、今回はいつもと違ったベクトルからEA制作を行いました。
目的は、9割のトレーダーが負けている現実があり、その原因を過去データから推察し改善策をシステム化することです。
9割のトレーダーが負けている理由
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- 資金管理がうまくできず、大きなロスカット
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- スプレッドが積み重なり証拠金を減らしていく
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- 手法が定まっていない、勝てる手法ではない
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- メンタルのコントロールが出来ていない
各トレーダーによって様々ですが、これらが主要な原因となっているのではないでしょうか。
この原因を突き詰めると全て「損切りをしたから」に収束します。
つまり極論を言えば「損切りをしなければ負けない」と言い換えることができます。
着目した点は、年単位のマクロな視点で見るとどの通貨も「レンジ相場である」ということです。
例を出すと、2014年から2020年までの7年間でドル円は99円から126円で推移しています。
つまりドル円では99円から126円の取引のほとんどが救われたということですね。
※直近3年間では101円から114円で推移
よって、90円から130円までの間でポジションを持たせ「損切りを一切しなければ勝てる」という仮説を立てました。
「莫大な資金が必要なのでは?」と疑問が出てきますね。
ご認識の通り、この手法で最も大切なことは適切な資金量と適切なロット数です。
そこで「必要な資金はいくらなのか」についても合わせて検証しています。
詳細・購入「逃げ切りの刃」のロジック
基本的な構成を列挙します。
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- 長期保有型のEAであり、ドル円の価格が90円から130円の間に収まることを想定しています。
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- 売買ロジックはロングとショートそれぞれ201パターン、合計402パターンで構成されています。
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- それぞれの売買ロジックを独立させているため、1つのロジックは複数のポジションを持ちません。
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- 最大保有ポジション数は201です。
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- 取引回数が非常に多く、細かく利益を積み上げるスタイルです。
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- TP(利確)はパラメーター化しているので変更できますが、デフォルトは20pipsで設定しています。
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- 20pipsの利益確定をするまでポジションを持ち続けます。(損切りをしない、週末持ち越し有り)
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- 利益確定をするとそのポジションは精算され、再度条件を満たすと新たにポジションを持つ仕様です。
ドル円の価格が90円から130円の間に収まる限り、上記の動作を繰り返し続けます。
「逃げ切りの刃」の解説
複利運用、ピラミッディングは行わず、最適化、カーブフィッテイングを行っていません。
想定しているレンジを超えた場合の救済措置として、指定している価格内以外での新規ポジションを持たないロジックを組み込んでいます。
つまり、ドル円では90円未満、130円以上では新規エントリーを行わず利益確定の決済のみを行います。
「逃げ切りの刃」の使い方
価格が長期的なレンジを抜ける前に小刻みに取引を行い、逃げ切りを狙います。
<安定型>
証拠金△△万スタート
→ レンジを抜ける前に△△万を増やし出金
→ 残り△△万で長期的なレンジを抜けるまで利益を上げ続ける
<チャレンジ型>
→ 半年、1年後に大きな価格変動がないと読むならばロット数を上げ△△万を増やし出金
→ 残り△△万で長期的なレンジを抜けるまで利益を上げ続ける
バックテスト結果
取引期間:2014年2月1日~2021年1月31日(7年間)
通貨ペア:ドル円
スプレッド:1pips
スリッページ:2pips
時間足:1分足
テイクプロフィット:20pips
ストップロス:無し
ロット数0.01ロット
初期証拠金:200万円
結果報告(ドル円)
総取引回数は12831回、証拠金最大減少額は105万、残高が212万増えて純利益は459,425円でした。
バックテストの結果はゆるやかな右肩上がりで、仮説通りの結果となりました。
取引結果の分析
取引開始時の価格は102.15円、期間中の最高値は125.90円、最安値が98.80円 取引終了時は104.72円となっています。
7年間で45万の利益は少なく感じますが、純利益はロット数に依存するため0.02ロットなら90万、0.1ロットなら450万の純利益になりますね。
続いて、期待値を見ていきましょう。
取引回数が12831回、勝率96%なので12316回が勝ち取引です。
市場が開いているのは年間でおよそ260日、7年間で1820日とすると
1日平均は 12316 ÷ 1820 = 6.76回の勝ち取引となります。
つまり20pipsの利確を6.76回、1日当たり135pipsを取っている計算になります。
よって、(開始日からの日数 × 135pips) ー 含み損 = 損益となるため、長期的な運用が適しています。
「逃げ切りの刃」は「取引開始時の価格と期間中の最高値」また「取引開始時の価格と期間中の最安値」のそれぞれの乖離が小さいほど利益を積み上げやすい(含み損が少ない)特徴があります。
今回の開始時から終了時の価格の変動幅は
102.15 – 125.90 = 23.75円
102.15 – 98.80 = 3.35円
つまり、約27円の大きな値動きでは証拠金の最大減少額は105万円というデータが取れました。
直近3年間のバックテスト結果
取引期間:2018年1月2日~2020年12月31日(3年間)
総取引回数は4016回、証拠金の最大減少額は10万、残高が68万増えて純利益は27万円でした。
直近3年間での開始時から終了時の価格の変動幅は
114.57 – 112.60 = 1.97円
112.60 – 101.09 = 11.51円
つまり、約13円の値動きでは証拠金の最大減少額は10万円というデータが取れました。
この2つのデータから必要な証拠金を算出すると、13円の値動きで10万円、27円の値動きでは105万円が最低でも必要になってくることがわかります。
この基準値を参考に、半年、1年後の値動きが大きいと読むならばロット数を抑えめに、
もしくは値動きが5~10円程度と予測するならロット数を増やす、などの選択肢も取れるでしょう。
考察
「逃げ切りの刃」は長期的に運用することにより、冒頭で述べた9割が負けている原因の大部分を解決しています。
資金管理がうまくできず、大きなロスカット
・・・事前に想定される損益がある程度わかっているため、EA設定時に適切なロット数にすれば解決するでしょう。「逃げ切りの刃」は含み損を必ず抱える仕様であるため稼働してしばらくは初期証拠金を下回りますが、少しずつ残高を積み上げていきます。
スプレッドが積み重なり証拠金を減らしていく
・・・「逃げ切りの刃」のロジックは、スプレッドの値に関わらずポジション毎に20pipsの利幅で決済するため、スプレッドの影響をほとんど受けません。
手法が定まっていない、勝てる手法ではない
・・・長期的なレンジをブレイクしない限り、残高を積み上げる結果がでています。
メンタルのコントロールが出来ない
・・・24時間自動売買のため、メンタルが取引に影響することはありません。しかし、含み損を抱え続ける仕様のため含み損への理解は必要です。
デメリット
細かく利益を積み上げていくEAのため、短期間で大きく稼ぐことは出来ない
・・・開始からしばらくの間は証拠金が減り、徐々に少しずつ利益を上げていくEAです。年単位での長期的な手法となります。
想定している長期のレンジをブレイクした場合は退場リスクがある
・・・ドル円が150円になる。もしくは50円になるなど、想定外の価格になった場合は資金が足りずに退場してしまう可能性が高まります。
救済措置として90円以下、130円以上では新規エントリーを行わないロジックを組み込んでいますが、レンジ内に価格が戻ってこない限り厳しい結果になりかねません。
逆にとらえると、想定している長期のレンジ内に価格が収まっている限り永続的に利益を生み続ける可能性が高まります。
この点については、長期的に想定しているレンジ内に留まるかどうかの不確定要素をどのように捉えるかで「逃げ切りの刃」の評価が変わってくるでしょう。
必要資金が大きい
・・・検証の結果、直近3年間で利益を上げるためには最低10万円、7年間では最低100万円が必要でした。
まとめ
FXは投資ではなく投機であると言われています。
一般的なテクニカル分析を利用したFX取引では株式などに比べてギャンブル要素が強いためですね。
「逃げ切りの刃」は資金管理を軸にした手法であり、利益を積み上げつつリスクを最小限に抑えた手法です。
最大の長所は、想定したレンジ内であれば半永久的に利益を積み上げていく可能性があることです。
対応業者
特に指定はありませんが、最大ポジション数(201)が可能な業者でお願いします。
パラメーター
Lots・・・ロット数
StopLoss・・・ストップロス 損切りを行わないため、0.0を指定
TakeProfit・・・利益確定のpip数
Slippage・・・スリッページ
マジックナンバー・・・1~402を使用しています。
※他のEAと併用する際はマジックナンバーが重複しないようにして下さい。
時間足は1分足に対応しています。